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久坂の手のひらは温かい雫で濡れた。

Creation date: Mar 17, 2024 3:16am     Last modified date: Mar 17, 2024 3:16am   Last visit date: Jul 25, 2024 1:21pm
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Mar 17, 2024  ( 1 post )  
3/17/2024
3:16am
John Smith (johnsmith786)

久坂の手のひらは温かい雫で濡れた。

 

 

「兄上とはまだ二人でご飯を食べに出掛けると言う約束を果たしてません。ですからその約束を果たすのを目標としていただけませんか。」

 

 

これでも必死に泣くのを堪えて話している。嗚咽を我慢し涙が流れないように顔の角度を変えたりしてみる。

 

 

「そうだね。その約束がまだだった。」

 

 

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「兄上,もしそれが守れなくても私は怒ったりしませんよ?ただそんな約束を交した妹がいた事を心に留めておいて欲しいんです。」

 

 

『妹が“いる”ではなく“いた”……か。』

 

 

やはり三津も自分が戻って来ない事を覚悟しているのだと理解した。

 

 

「三津,お前は聡明だね。兄として誇り高い。」

 

 

「兄上に褒められて光栄です。兄上,私は……三津は兄上の言葉を肝に銘じて自分の役割を全うする事を約束します。」

 

 

「あぁ頼むよ。三津。」

 

 

久坂の優しい声と共に額に口づけが落ちてきた。その感触に三津の我慢は限界を超えた。

 

 

「兄上!泣き虫で甘えん坊の三津をお許しください!」

 

 

三津は久坂のお腹にしがみついて顔を埋めた。久坂は何も言わず震える背中を撫で続けた。

 

 

「……何なんですかねあの偽兄妹。本物の兄妹より兄妹なんですけど。」

 

 

部屋の外で壁にもたれていた入江が遠い目をした。

 

 

「本当にね。私も三津との時間が欲しいんだけどねぇ。」

 

 

あんな会話を聞かされたら嫉妬全開で三津を返せなんて言えないじゃないか。

 

 

「桂さんは今晩あちらの家に戻られては?もしかしたらいつもと違うと三津さんの不安を煽るかもしれませんが。」

 

 

「あの会話聞いて分かったろ?三津はとっくに腹を括ってる。お言葉に甘えて今日はあっちに戻って私からもこれからの話をしようと思う。」

 

 

「そうですね。お互い悔いのないように。」

 

 

 

 

 

 

桂に家に帰ろうと言われた時,三津は浮かない顔をした。また邪魔者扱いをされるのだろうかと思って胸が痛んだ。

 

 

「そんな悲しい顔しないでくれ。君と二人の時間を過ごしたいだけだ。」

 

 

そうやって諭されても嬉しいとは思えなかった。桂からも別れの言葉を告げられそうで怖かった。

 

 

「頼むからそんな顔しないでくれって。」

 

 

桂は笑って笑ってと三津の頬を揉みほぐした。

 

 

『本当に柔らかい……。』

 

 

知らず知らずのうちに桂の顔は緩みきっていた。「すみません後は家でやってもらえませんかね?」

 

 

見てるこっちの身になってくれよと入江がやれやれと嘲笑する。

 

 

「すまないね,さぁ帰ろう。」

 

 

桂が穏やかな顔で手を差し伸べると三津はその脇をすり抜けて仮自室へと駆け込んだ。

そしてすぐに戻って来た。また拒否されたのかと呆然と立ち尽くす桂の元へ風呂敷包みを抱えて戻って来た。

 

 

「一緒に帰ります。」

 

 

「……うん,一緒に帰ろう。貸してごらん。」

 

 

桂は三津から風呂敷を受け取ると中の脇差しを包み直した。それを背負うような形で三津の体に斜めに巻きつけて胸元できゅっと結び目を作った。

 

 

「あっありがとうございます!」

 

 

さっきの表情とはうって変わって目を輝かせた。これなら体にピッタリと寄り添うし,両手が空くと嬉しそうに手を握っては開いてを繰り返した。

 

 

「帯に掛かるのが気になるなら刀を前にして首の後ろに結び目をもってくればいい。じゃあ行こうか。」

 

 

改めて手を差し伸べると三津はその手を強く握った。

池田屋の事件以来藩邸の外に出る。あの日の光景は吉田の背中しか見ないようにしていたのと暗闇の中だったからよく覚えていない。

 

 

だけど視覚以外の感覚から受けた刺激は蔓延っていて息苦しさを感じた。

 

 

『大丈夫大丈夫。吉田さん一緒やもん。』

 

 

胸元の結び目を片手で握って,桂と繋いだ手も強く握った。